乙女温泉誕生秘話
乳がん経験談の聴き取りの中で、いくつか同じ意見が重なるものがありました。
その一つが 「温泉や銭湯などの大浴場に行きづらい」
私自身もその気持ちがよくわかるので、みんなで一緒に超える機会を作れたらいいなと考えました。一度 勇気を出して大浴場に行ってみると、2回目のハードルはグッと下がります。
この話を 地元で人気の温泉銭湯の女将さんにすると
「そんなことなら、うちのお風呂を貸すから練習したらいいよ」と言ってくれました。
女湯を 術後の傷跡が気になる人や 脱毛期の人の為に貸してくれるというのです。
なんて楽しそう!!
同じ思いの仲間たちと一緒にお風呂に入れるなんて!
話を進めるうちに、女将さんが言いました。
「この日は定休日だから、男湯にもお湯入れてあげるよ。乳がんじゃないお友達にも入ってもらったら、あなた達の気持ちが伝わるんじゃない?」
そうなんです。
たまにある心無い言葉や視線に傷付く仲間たちの話は、悲しいけれど現実にありました。
それなら男湯を女湯に、女性なら誰でも入れるお風呂にすれば、浴室を分けて入浴することができるし、
お風呂上がりに女性同士の話ができて、気持ちを共有することができる。
ここは、女性だけの空間。
「傷ができても、年をとっても、女はいつまでも【乙女】だから」
そう言った女将さんの優しい笑顔がずっと心に残っています。
こうして、乙女温泉が生まれました。